第7回全国エコツーリズム学生シンポジウムでの研究発表です。発表スライドと話した内容をまとめています。
エコツアーをより濃密な体験へ
滋賀県立大学の橋本果奈です。本日は「エコツアーをより濃密な体験へ」ということで、エコツーリズムにおける民泊活用の提案をさせていただきます。エコツアーと民泊を掛け合わせるとより深く濃い体験ができるのではないかというお話です。
はじめに
まずはじめに、なぜエコツーリズムと民泊に注目したのか?というところからお話しします。
私は大学を1年休学していたことがありまして、その時にタイへ行き、アジアゾウ保護のボランティアをしていました。
タイでボランティアしていた時はアジアゾウの保護活動をしながら、村にホームステイをしていました。そのとき保護活動もしながら、現地の生活・文化を体験しました。この経験から一つの地域に滞在すると深く濃い体験ができることがわかりました。
日本でもそんな体験できないかなと考え、行きついたのが民泊でした。
民泊とは
最近よく耳にするようになった、民泊という言葉について整理しておきたいと思います。
民泊とは簡単に言うと民家に宿泊することです。
そしてその地域ならではの体験プログラムがあります。例えば、農作業、郷土料理作り、地域散策などです。その地域の生活文化を体験でき、地域の方との深い交流ができるのが民泊です。
なお、この発表では今話題のAirBnBなどで宿泊のみを対象にしている場合はのぞくこととします。
エコツーリズムとは
すでにご存じの方も多いと思いますが、ここでエコツーリズムの定義について確認しましょう。
エコツーリズム協会の定義によると、エコツーリズムとは、
1.自然・歴史・文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させること。
2.観光によってそれらの資源が損なわれることがないよう、適切な管理に基づく保護・保全をはかること。
3.地域資源の健全な存続による地域経済への波及効果が実現することをねらいとする、資源の保護+観光業の成立+地域振興の融合をめざす観光の考え方である。
付記として、環境の保全を図りながら観光資源としての魅力を享受し、地域への関心を深め理解を高めてもらう手段としてのプログラムがつくられるべき、とあります。
「地域への関心を深め理解を高めてもらう」という部分がポイントになるのではと考えています。そこで私が考える理想のエコツーリズムについて説明し、民泊が濃く深い体験に寄与するのではないかということを解説します。
理想のエコツーリズムとは
まず、エコツーリズムにおいて大事なのは地域資源、そしてそれらを守ることです。
そのために必要なのは地域資源を深く知ること、それに愛着を持つことです。
この深く知ることと、愛着を持つということはエコツアーでの「深く濃い体験」をすることによって生まれるのではないかと考えます。その深く濃い体験とはどこでできるのか。それができるのが民泊なのです。
民泊紹介
それでは、私が訪れた民泊を順に紹介してゆきます。
(それぞれの民泊について詳しい記事がありますので、そちらもご覧ください。)
京都府福知山市「鹿鳴庵」の民泊体験はこちら↓
≫京都府福知山市の民泊「鹿鳴庵」に行ってきたよ
滋賀県東近江市「穂の香のしずく」の民泊体験はこちら↓
≫滋賀県東近江市の民泊「穂の香のしずく」に行ってきたよ
滋賀県日野町「ぶんべぇ」の民泊体験はこちら↓
≫滋賀県日野町の民泊「ぶんべぇ」に行ってきたよ
民泊がもたらすメリット
以上の民泊に泊めてもらい、わかった民泊のメリットについて説明します。
まず、民泊は地域の人の生の声を聴けるので、地域の資源について実感をもって学ぶことができます。しかも話す時間がたっぷりあるので思う存分話をし、地域の理解を深めることができます。
また、受入側も外からの声を聴くことで、地域の魅力を再認識することができます。地域の人と仲良くなるので「また来ます」と思わず言ってしまうのが民泊です。
民泊に泊まるとその地域が一度訪れて終わりでない、また来たい場所になるのです。
今までとは違うところ
ここで民泊のメリットはお分かりいただけたと思いますが、なぜエコツアーと民泊を掛け合わせた提案をするのかを説明します。
民泊を利用することによってエコツアー単体だけよりも…
より深く濃い体験ができます。また、もう一度その地域に訪れる理由ができます。
そして民泊は地域の人自身がが地域のことをよく知ることになるので、地域資源が磨かれてゆきます。
滞在型エコツーリズムの提案
これらをふまえて、滞在型のエコツーリズムを提案したいと思います。
エコツアーと民泊をセットで体験してもらおう!というのが私の提案です。
セットで体験することによって、地域資源についてより深く知ることができ、愛着もより一層持てます。
また、これらの効果はエコツアー参加者に限らず、民泊の受け入れ地域の方にも言えることです。地域の方が地域資源をより深く知り、愛着を持って大切にしてゆくことで、その地域の資源はより魅力的になってゆきます。
民泊に泊まると?
日中にエコツアーに参加し、そのあと、民泊に泊まった場合と他の宿泊施設に泊まった場合について考えます。
民泊に泊まった時は、エコツアーで見た地域資源がどのように生活と関わっているか実感できます。それに対し、民泊に泊まらなかった場合、地域資源と生活との関わりが見えません。
また、民泊では受入家庭も地域のガイドさんとなるので、地域について知る機会がたくさんあります。これが民泊以外だと地域について知る機会は少なくなります。
そして、地域の人と仲良くなることによって、また訪れる理由ができます。このように、民泊だと地域をより深く知れ、より愛着が持てます。
民泊を活用することによって、エコツアーで得たものをより深めることができるのです。
滞在型エコツーリズム実践のために
滞在型エコツーリズム実践のためには課題があります。課題とそれに対する解決策を、ヒアリングの内容をもとに提示します。
民泊を取り入れたエコツーリズムを行うにあたって、必要になるのは民泊受け入れ家庭を増やすことです。受入家庭の壁となっているのはどうやら「大変そう」というイメージのようです。手続きが難しそう、参加者のもてなしや料理はどうしようかといったことが不安要素になっています。
解決策として必要なことが大きく分けて3つあると考えました。
手続きは担当職員の方が熱心にやってくれたと鹿鳴庵の足立さんがおっしゃっていました。そのことから
1つめに手続きの手厚い支援があると民泊開業までのハードルは下がると考えられます。
2つめに民泊に役立つ知識をつけたり、不安を解消するために、地域内で勉強会開催すると効果があると考えられます。
日野ではすでに一品持ち寄り会を開催しており、料理の勉強会をしているようです。3つめに民泊をやっている方の体験談を聞く機会を設けるのも大切なことであると思います。
いろんな話を聞けるのがおもしろいと鹿鳴庵の足立さん、穂の香のしずくの植田さんがおっしゃっていました。田舎体験して生活が変わったとぶんべぇの古道さんはおっしゃっていました。このような体験談を実際にやっている人から直接聞くことでイメージが湧きやすくなります。
これら3つは地域で民泊講座を開講することによってサポートできると考えられます。
これからしたいこと
以上で発表は終わりなのですが、今提案した滞在型エコツーリズムを自分自身が実践しようと考えているので、それについて少しお話します。
まず、大学卒業後、地域おこし協力隊として地域に深く関わります。
そして、任期が終わった3年後起業し、今回発表したような滞在型エコツーリズムを実践しようと考えています。
地域の民泊と連携し、民泊とエコツーリズムを掛け合わせ、「より深く濃い体験」を提供できたらと考えています。
さいごに
発表のさいごに日野町の民泊のパンフレットを配布しました。
エコツアーに関する記事まとめ
民泊に泊まってみたい人向けの記事
わたしが泊まって体験した素敵な民泊です!関西方面で旅したい方はぜひ。
≫京都府福知山市の民泊「鹿鳴庵」に行ってきたよ
エコツーリズム実践者になりたい人向けの記事
環境省主催 エコツーリズムガイド等養成研修にて学んだ内容をまとめています。エコツーリズムに限らず、観光ガイドや地域の魅力を発信する人にはぜひシェアしたい内容でした!
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